書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

メニュとは献立表のことである

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カタカナで一般化した外来語が必ずしも本来の意味と同じではなく、

むしろ微妙にずれるのはよくあること。

 

言葉に限らず、その土地土地に合ったものに変形しているのは当然のことで、

それ自体はそんなもんかな〜、と思っているのですが、

その変形した言葉の意味が、もとの意味と同じ、と信じて疑わないのは、

う〜ん、どうなんだろう、と考えてしまうのです。

 

 

その最たるもののひとつが、メニュ。

日本語のメニュは、メニュ表(献立表)でもあり、メニュ表にある料理の一品一品のことも意味しますが、

英語のmenuはあくまでメニュ表(献立表)のことであって、料理の一品一品のことではないんですよね。

それを英語のmenuでも、日本語で意味する料理の一品一品と同じように扱っているのは、

日本では本当によく見る光景。

 

状況から通じなくはないと思うけれど、ん?がぬぎいきれないんです、私。

通じればいいんだよ!という態度の人も多いけれど、

同じ使うならすんなり受け止められるようにすればいいのに、もったいないなぁ、と思っちゃうんですよね。

 

 

もう少しわかりやすく言うと、

「このレストラン、メニュ多いね」という表現は日本語では違和感なくても、

これをそのまま英語に置き換えた

「There are many menus at this restaurant」はおかしい、ってことです。

 

では、英語でどう言うか、っていうと、

「There are many choices/dishes on the menu at this restaurant」が妥当かな。

訳すと、「このレストランのメニュ、選択肢/品数が多いね」となり、

choicesだと選択肢、dishesだと料理数が強調され、

menuはあくまでメニュ表(献立表)を指すことがわかるかと思います。

 

 

こういうの、ないがしろにされているように思えるけれど、

こういう些細なことが大事なんじゃないか、って思えるのです。