書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

総菜か、総菜か、それが問題だ

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先日、ライターとしての仕事をした際、またしてもうっかりしちゃった!

そこでの統一表記(雑誌や書籍などでは、漢字にするか、漢字ならどの字を使うか、ひらがなにするか、カタカナにするか、固有名詞や特例を除き、全体を通して同じものを使います)は、

 

“惣菜”

 

なのですが、

 

“総菜”

 

って書いちゃった!

 

デパ地下などでは“惣菜”の方をよく見かけますし、私自身も字面だけ眺めると

“総菜”よりも“惣菜”の方がおいしそうに思えます。

 

 

じゃあ、なんでうっかりしちゃったか、というと、先に書いたように、企画によって使う文字を決め、それは企画によって変わってくるのですが、ベースになるものがあり、それは『記者ハンドブック 新聞用字用語集』(共同通信社)だったり、『朝日新聞の用語の手引』(朝日新聞社)だったり。

そう、新聞社系のものが参考にすることが多いのです。

朝日新聞の用語の手引き

朝日新聞の用語の手引き

 

 

で、これらは何をベースにしているかというと、漢字の場合は、常用漢字(学校で教わる漢字)。

これを制定しているのは、国語審議会で、これに新聞社など主要メディアが倣い、ほかのマスメディアが追随するというパターンになっています(もちろん、これを参考にしつつ、メディアや媒体によって、そこ独自のしっかりと統一表記を設けているところもあります)。

 

“惣菜”の“惣”は常用漢字じゃないんです。

第二次世界大戦後、漢字は国語審議会によって大きく整理され、1956年、“惣”は同じ音をもつほかの漢字に当てはめることになり、そのとき選ばれた漢字が“総”。

だから新聞社系は軒並み、“惣菜”ではなく、“総菜”表記をするのです。

 

 

私が駆け出しのころ、レストランガイドとか手みやげグルメといった書籍を作っているときに、当初どっちを使っていいのか混乱し、幾度も確認を繰り返し、“総”が使われる理由を調べてやっと納得して、そのときの表記が“総菜”。

すっかり“総菜”というのが頭に叩き込まれてしまったのです。

なので、媒体次第で “総菜”と書くと頭ではわかっていても、ついつい“惣菜”と綴ってしまう、という。。。

 

 

こういうのたくさんあります。

どういう字をあてるか、会社によって違うし、製作物によって違うし、ときに同じ雑誌でも特集によって変わることもある。

何を使えば内容にもっともふさわしいか、でもそればかりを重要視すると全体の表記がバラバラになる、常につきまとう悩ましい問題です。