「おすすめの料理は何ですか?」
食関連の本、雑誌、冊子、ウェブなどの編集、ディレクション、執筆の仕事は、かれこれ20年以上やっています。
取材にも行きますし、そのための下見で飲食店に訪問することは、すっかり日常の一部となっています。
下見は、すでに企画が決定していて、それに適しているかどうかの確認で行くこともあるし、
もっと広い意味で、すぐにどうこうではないけれど見ておきたい、ということもあります。
いずれにしても下見の場合は、自分が好きなものや食べたいものの注文はしません(というか、できません)。
頼むのは、定番だったり(パン屋さんだったら、食パンやバゲット)、お店の看板メニューだったり。
プライヴェートで行く場合は、食べてみたいな、だったり、好きなものをオーダーします。
初めてのお店で、いくつか頼むとき、何にしようか迷うことってありますよね。
そんなとき、
「おすすめはありますか?」
と訊きます。
このとき、ていねいにすらすらと答えてくれたら、そこはいい店だと、断言します! 味の好みは合わないまでも、お店の姿勢とか雰囲気は、間違いないでしょう。
「う〜ん、何でしょう?」
「うちはどれもおすすめです」
ではなく、
「○○は、フランス料理の定番ですが、大胆に和食っぽくアレンジしたもので、隠し味のお醤油が食欲をそそりますよ」
「うちは、通常は肉料理をおすすめするのですが、今日はいい魚が入ったので、こっちが断然いいです」
ねっ、後者の方が、おっ、と身を乗り出して、どんな料理が出てくるかな〜、ってワクワクしますよね。
これ、後者の形で答えてくれるのが、アルバイトやパート、新入りさんであればあるほど、いい!
だって、彼らも実際に食べたり、情報を共有したりしてるわけでしょ。
そして、そういう、いわば“いちスタッフ”が拙くても自分が得たことを一生懸命伝えようとしてくれるのは、いい料理であって、そういう体験をスタッフひとりひとりにさせているお店は、いいお店なんです。それって人を大事にしている、ってことでもあるから。
もし、人が足りない、よって、体験の共有やお客さんにていねいに説明することができない、といった場合は、
これをメニューやポップに書いてみるのも手です。
先のことを口頭で説明する代わり、ってわけです。