書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

私の母国は、夢と希望の国

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かれこれ10年以上前のこと。

私には、生まれと育ちはスリランカの、イギリス人の友人がいます。

親族には国に残っている人もいますが、イギリスを筆頭にドイツ、オーストラリアなどに散らばっています。

その理由は、内線が続き、自国でちゃんとした教育を受ける不安があったから。

彼女に当時、ティーンエイジャーの姪っ子がいました。

 

この女の子、勉強が非常によくでき、そこで国内情勢が不安な自国よりも国外で教育を、という話になったようです。

渡航先のひとつとしてあがったのが日本。

どうも学校に日本人の先生がいたか、特別授業があったかだったかのようで、親しみを覚えたのが、その理由でした。

 

先に観光で日本に訪問。

やっていけそうかどうかをみて、それから考えましょう、と。

(そのときに私も会ったのですが、非常に聡明な女の子でした。)

 

そのとき、観光で日本に来るのに、ビザが必要で、渡航目的を記した然るべきレターに加え、日本にスリランカの家族/友人がいるなど、受け入れ先についてもその保証をつけて提出しなければいけなかったような。。。

記憶が曖昧ですが、観光で何日か来るにも、その基準はあまりにも厳しく、びっくりしたのは確かです。

 

その女の子は日本での滞在が楽しかったようで、これから高等教育を受ける国にしてもいいな、と感じた模様。

そして、そのあと友人に、その女の子が日本に来ることについて、率直な意見を求められました。

 

「正直言って、彼女が来るべき国は日本ではないと思う、残念ながら。

自分の国のことをこんな風に言いたくないけれど、この国は異質なものは排除する、それは外国人も同様、有色人種だとなおさら」

これに大きく頷いた彼女。そう、いつだったか、「日本人は(自分たちと同胞である)有色人種を下に見ているから」とぼそっと言ったことがあったのです。

「まず、そういう差別が立ちはだかる。若く優秀な彼女に、そんな理不尽なことで惨めな思いやしなくてもいい苦労を、私はさせたくない。

それに日本語を習得しても、それは日本のなかでしか使う場所がない。この国がこれから先、大きく経済発展するならともなく、とてもそうは思えない。

むしろ、英語はできるんだし、英語が公用語で、若く優秀な人材を両手を広げて受け入れてくれる国を選んだ方がいい、シンガポールとかオーストラリアとか」

じ〜っと聞いていて「うん、そうだね。友達が日本に住んでるし、私も何度か日本に来ているから、言っていることはよくわかる。じっくり考える」

 

結局、その女の子はシンガポールの大学で医学を学び、現在はオーストラリアに暮らしています。

とても幸せそうで、何よりです。

 

 

日本生まれのタイ人の少年に退去強制取り消し訴訟の判決。

mainichi.jp

このニュースを見ながら、私がぼんやりと思い出したのはこんなことでした。