書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

こうやって刷り込みはなされるのね

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聞くともなくラジオを、日本語の放送であればAMラジオを流している時間が多いのですが、

仕事や用事をしながらだと、天気予報とか、耳をすまそうと思っていたことも聞き逃してしまうのですが、逆に、耳に大きく飛び込んできて、あれっ?と引っかかることもあります。

 

ある番組で、小さな子供(未就学児童、かな?)に家族や近しい人がインタビューするという内容のものがあり、そこで

「お母さんが作る料理で好きなものは何?」という質問があり、

「えっ?」とびっくりしてしまったのです。

 

理由は2つ。

・料理はお母さんが作る

・家庭で食べるものは手作りである

という前提のもとにあった質問だったから。

 

その前後で、

「じゃあ、お父さんが作る料理で好きなものは?」

「外食では何が好き?」

というのがなかったことが、

そしてそこには悪意も何もなく、実に無邪気な質問だったのが余計にタチが悪い。

 

いまだに昭和の家族を引きずっているんだよなぁ。

意識しているときは、わかったようなことを言っている人に多いパターン。

わかったようなことを言っている人は、本人に深い考えはなく、

周囲の空気の“いい”とする動きになびいているだけだから、

今はこういう時代だから、という文脈の中ではふさわしいことを言うけれど、

そうでないところだと、本人も意識していないであろう、無意識の刷り込みが露呈される、のよね。

 

で、子供の答え。

セブンイレブンのおにぎりが好き!」

お〜、いいじゃない!

 

そのやりとりを受けて、ラジオ番組のパーソナリティーが、焦ったような半笑いの口調で、

「いつもお母さんのごはんだと飽きちゃうよね〜。たまに食べるものはおいしく感じるよね〜」と。

 

おい! おい!!! おい!!!

 

ここでも、

・料理はお母さんが作る

・家庭で食べるものは手作りである

の前提が繰り返されているんですよね〜。

同時に、企業努力がすさまじいセブンイレブンに対しても失礼だ!

そして、アシスタントもいるのに、この発言をニコニコ笑って聞いて、諌めないなんて!

 

 

もうさ、こーゆーの、やめない?

料理を作るのはお母さんだけの仕事じゃないし、食事が必ずしも手作りがいいわけじゃないし、手作りは愛情のバロメータじゃない。

 

お父さんが作っても、おじいちゃんおばあちゃんが作っても、お兄ちゃんお姉ちゃんが作っても、おじさんおばさんが作っても、ヘルパーさんが作っても、誰が作ってもいい。

そもそも、食事は手作りじゃなくてもいい、買ってきたものでもデリバリーでも、食べに出かけてもいい。

でもって、手作りの方がそうでないものよりもおいしいわけじゃない。

 

こうやって無意識の刷り込みは脈々と続けられるんだなぁ。

いつまで経っても、世の中、変わらないわけだ。

 

 

先の子供への質問、「食べ物で何が好き?」で十分です。