書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

感謝!これも縁だなぁ、なんてじわじわと

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それまで、本にしろ雑誌にしろ、東京のレストランガイドや持ち帰りグルメの編集や執筆は作ったことあったけれど、

店やメニュー紹介といったガイドものではなく、本格的に厨房に入り込んだり細かく話をきいたりしての食情報の取材をするようになったのは、2001年以降。

 

当然、大御所、と呼ばれる方々のところにも出向くわけで。

 

とはいえ仕事なので、萎縮するとか遠慮するとかそんなことはないのだけれど、

話をちゃんと引き出せるかどうか、それに心を砕いていました。

 

ちゃんと話を聞くためには、相当の下準備が必要。

具体的には、自分の舌で確かめる、関連する専門書籍を読む、フランス語やワインを学ぶ(洋の食の世界ではフランス語がベース。最低、料理&製菓用語と素材などのフランス語は知らないと、なのです)、ついには基礎を叩き込むためにイギリスのクッカリースクールに行く、と

まあ、わざわざ綴ることではなく、仕事である以上、当然のことではあるのですが。

 

要するに、

スュエって何ですか、グラサージュってどういうことですか、なんていちいち訊いていたら本題に入る前に取材時間が終了するのです。

対等とはいかないまでも、できるところまではやって挑まないと、お話にならないのです。

 

大御所の方のフランス料理店の取材は、今よりずっと敷居が高く、

ちゃんと勉強して行かないと、

「そんなことも知らないのか」「帰ってくれ」または口をきいてもらえない、こともある、なんてことがまことしやかに言われたものです。

 

幸い、というべきか、一応勉強はして来ているようだからまあいいか、と諦めてくださったのか、

大御所さんの取材は、そうだったのか!という発見に満ちたいつも楽しい時間でした

(今は、私も歳をとったから、取材先の方がお若く、逆に新鮮な刺激をもらうことが多い)。

 

 

取材として最初に訪問し、ご挨拶をしたのは10年以上前だった、かと。

取材っておもしろく、幾度も行くところもあれば、ユーザーとしては利用していても仕事では訪問したことがない、ってところもあります。

 

東京・六本木、出雲大社東京分祠の向かいにある「トレフ ミヤモト」は、取材で何度かうかがったフランス料理店。

http://www.3fff-miyamoto.com/

 

なかには取材が1日がかりのこともあったりで、思い出深いお店。

いつだったか、取材でうかがったときに、本題が終わり、脇道に話がそれたとき、

ちょうどリリー・フランキーの『東京タワー』がベストセラーだった頃で、

炭坑町だったところの風景で話が盛り上がりました。

 

『東京タワー』のなかではそんな描写は出たか出なかっただけれど、どこでどういう流れになったか

お昼を告げるので発破かける音がする、みたいなことがきっかけで、

「トレフ ミヤモト」の宮本シェフは福岡県の、私も山口県の炭坑町だったところの出身なので、

そうそう!みたいなことになったのでした。

 

その後、私が福岡に居を移してからも、SNSの発達のおかげで、(直接ではないにしろ)やりとりが続き、

いつかは私のイギリスイベントにも来ていただいて、うれしかったなぁ。

 

 

で、FBで「トレフ ミヤモト」の宮本シェフが、料理王国と福岡県のコラボによる

「福岡県レストランキャンペーン」を、冊子ともにご紹介されていて、

うわっ、欲しいです!と言ったら

冊子をご送付くださいました(トップの写真がそれ)。

(私は遠慮がないのだ、人の厚意は素直に受けることにしています)

 

 

うれしいなぁ。ありがたいなぁ。

 

この「福岡県レストランキャンペーン」、今月、2月いっぱいの開催で、

東京、福岡、そして兵庫の12の店で、福岡の食材を使ったメニューを展開しています。

 

 

現在は、より軽いものが好まれ、確かにそれは時代の流れで、

「トレフ ミヤモト」でもそういう料理がないわけではないけれど、

奥行きのあるソースにみられるように、フランス料理の力強さこそがこの店の神髄で、

いただくと、矜持を正す、原点回帰、な気になります。

 

本当にソースがね! 1滴も残さず、パンですくってしっかり食べたい!

量とも、ひと皿ひと皿の満足感が高い!

昨今の軽やかな料理もいいのですが、お目にかかれるところが減った、

今や古典ともいえる基本のソースを大事にした料理は、心底おいしい。

 

 

人間、それなりの歳月を生きていると、いろんな縁があるなぁ、と感じます。

宮本シェフともだし、

今回の「福岡県レストランキャンペーン」を展開している

料理王国は(今は違いますが)、
長いこと仕事をした媒体(最終的には、外部編集スタッフでしたし)で、

なんだか感慨深いこと、この上ない。