書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

人の顔を覚えることと覚えられること

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記憶力がいい方、だと思う。

一度会った人のことはたいがい覚えていて、軽く会釈して、こんにちは、ぐらいでも。

 

人の顔を覚える、というよりも、

人の名前を覚える、音でなく、視覚で。

名前をきいて、その文字が頭の中に浮かんで、それがスキャンされ、記憶装置に組み込まれる感じ。

なので、名前は書けても読み方を忘れてしまうことは、しばしば

(同じ理由で、漢字を書くことができても、読めなかったりする)。

 

人の場合は、名前に加え、そのときの状況、たとえば、パンの試食会で会ったとして、コーヒーの専門家も来るんだな、お菓子の専門家はマチのある保冷袋を持ち歩いているんだな、みたいなことを。

 

 

そんな出会いをした人と、数年後、仕事の現場に一緒になることがあります。

先方が私を覚えているケースはあまりなく、

「以前、○○の場でお会いしまたね」と伝えて、ああ、そうでしたか、といわれることもあれば、
怪訝そうな顔をされることもあり、

その場合は、私の方は確信がある場合でも、人違いということにしておく(面倒なので)。

 

 

そんな感じなので、「以前、○○の場でお会いしまたね」と伝えず、

初めてのようなそぶりをするようにしたのだけれど(確かに正面切ってちゃんと会うのは初めてだし)、

先日、先方がバッチリ覚えていてくださっていて、

 

これ、ちょっと感動しました。

本当に些細な出会いで、こんにちは、ぐらいしか言葉を交わしていなかったのだけれど、

それをしっかり覚えていてくださっていたのです。

そのあと、お互いの記憶のすり合わせで持ち上がること、しばし。

 

存在を認められるって、素直にうれしいもんなんだな。

 

 

以前、ワインの仕事をコンスタントにやっていた時期があり、

その関係で飲食業者向けのインポーターさんの試飲会に行ったとき。

著名なソムニエの方もいらしていて、熱心なご様子に、一流のプロはこうなんだなぁ、と感じ入った次第。

そのときは面識はなく(なので当然先方は私を知らない)、お見えになってるな、という認識だったのですが、

数カ月後、その方と仕事をすることになったときのこと。

最初の顔合わせのときに、「以前、○○の試飲会にいらしてましたよね。そのときは挨拶もせずに失礼しました」と開口一番おっしゃって、びっくりした記憶が。

 

ソムニエという、人の顔を見て忘れない仕事柄、ってこともあるのでしょうが、

まあ、びっくりしましたね。

お互いを認識して軽く会釈をしても忘れられることの方が断然多いのに、

それすらもしておらず、ただ同じ空間に居合わせただけだったのに。

一流のプロってこうなんだ!というのを垣間見た瞬間でもありました。