書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

人の評価にのっかってはしゃぐのって気持ち悪い

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1990年半ば、私が影響を受けた雑誌に「ウォールペーパー/Wallpaper」があります。

デザイン&建築を軸にしたライフスタイル誌っていうのかな、それまで縦軸だったのを横軸で切り取る視点がおもしろく、グラフィックデザインをやっている人に譲った号もあるけれど、何冊かはまだ手元に残しています。

なかでも97年だったか、に発刊された別冊の北欧特集は、今も私のバイブル。

 

ロンドンでこの「ウォールペーパー」を立ち上げたのがカナダ人ジャーナリストのタイラー・ブリュレ/Tyler Brûlé。

彼が「ウォールペーパー」を売却してから、さらに編集長の立場を離れてからは雑誌のカラーが替わり、とびついて眺める、ことはなくなってしまったけれど。

 

モノクル/Monocle」は、そのタイラー・ブリュレが2006年に立ち上げた雑誌。

「ウォールペーパー」よりも、もっと今のリアル(&理想的な)生活のシーンを切り取った感じ。

世界中にネットワークをはっていて、旅行、というより、暮らしている気分になれる。

これ、ときどき眺めています。

ちょっとがちゃがちゃしているなぁ、表紙が目立つけど私好みでまったくない、のだけれど。

 

世界の住みやすい都市ランキング、っていろんな媒体がやってるでしょ。

モノクル」はアジアの都市からのエントリー率が高く、

日本の某市は、○位に選ばれた!ということを毎回誇らしく言っているけれど、

モノクル」を読んだ、どころか、見たことある、どころか、どういう媒体か、雑誌名自体を知っている人がたくさんいるとは到底思えない!

だって、私の周りのメディアにいるですら、「モノクル」を知らない、見たことない、って人多いんだもん。

いわんや一般の人はだし、経済や行政に特化した内容でもないので、その手の人が眺めているとも思えない。

 

 

う〜ん、なんで無条件にひれ伏し、何の疑いも持たずに、何の確認もせずに諸手をあげて喜ぶんだろう?

そもそも、それって他人の評価じゃん!

 

世界遺産登録も、ノーベル賞も、グラミー賞も、アカデミー賞も、オリンピックも、

日本人が(なかには国籍はすでに日本でない人もいるのに)選ばれて大はしゃぎするのって、必要以上に過剰に報道される、さらにうれしいを強要されるのって何だかなぁ。

それって他人の評価にのっかてるだけじゃん!

 

もっというと、欧米のお墨付きがそんなにエライ!のか?

そんのにはしゃぐのって、自分で自分を評価する能力のないノータリンです!って言っているようなもの、って思わないのかな?

さらにその評価をするのが、アジアやアフリカだったら、ここまで喜ぶのかな?

 

 

東京に、フランスの冷凍食品を扱うスーパーマーケットができ、

さすがフランス!おいしい!みたいな声ばかりが聞こえるのも気持ち悪い。

日本の冷凍食品もレベル高いよ、イギリスの高級スーパーマーケットのレディミールも負けてはいない。

でも、これは間違いなく“グルメの国”を標榜しているフランス発だから、成立するんだよね〜。

フランスというだけでひれ伏すあの感じ。

私はフランスでマズいものに何度も遭遇したぞ!

 

 

メディアとか権威とかステレオタイプの提供するものにのっかるのは安心かもしれないけれど、

それって必ずしも個人の嗜好に一致するとは限らない!のだよ。

自分の好みって、ほかでもない自分で評価するよりほかにない、のだよ。