書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

経験値が上がると瞬時に判断できるようになる

f:id:ricorice:20190226144859j:plain
 

今はすっかり配信サーヴィスのお世話になっていますが、1980〜90年代にかけての私は音楽(洋楽)オタクで、暇さえあればレコードやらCDやら、文字どおりハンティングしていました。

渋谷、三軒茶屋、下北沢、新宿(小滝橋通り)、御茶ノ水、吉祥寺をぐるぐる。

 

ラックの前に立ち、レコードの束を一度後ろに押しやって、一枚ずつ手前に送りながら、ザーッと見る、ってのは当たり前で、その速度の速いこと!

そのときって、じっくりみないんですよね。なんせチェックしたいレコードはたくさんあるわけで、瞬時に判断して、気になったものは取り出して見る、という流れ。

 

この経験値が上がってくると、ジャケ買いの頻度も上がってきました。

そして、それが、その時点ではまったく知らないミュージシャンでも曲でも、ほとんどハズレがない。むしろ当たり!の確率が高かったのです。

 

未知のものはジャケ買いだな!とほくそ笑んでいました。

 

 

2000年代中盤から後半にかけて、ワインの仕事が多くなりました。

仕事、となると、点ではなく体系的な知識の必要性を感じ、ワインスクールにも通いました。

 

嗜好や飲むシチュエーションもありますから、いいとされるワインが必ずしもその人にとっておいしいワインとは限らない。

“ワインの選び方”をテーマに取材をしたときに忘れられない言葉がありました。

 

「エチケット(ラベル)で選ぶのも手ですよ」。

えっ、と聞き返す私に、こう説明してくださいました。

「センスというか、造り手の好みは、ワインそのものだけでなく、エチケット(ラベル)にも表れます。

クラシカルなものはクラシカルだし、アヴァンギャルドなものはアヴァンギャルド。老舗のワインエステイトでも新しいラインでフレッシュ感を出したいときは、ぐっとモダンだったりしますから」

「エチケット(ラベル)でいいな、と感じるものは、ご自分とセンスが合っている表れ。そういうワインは、ワインそのもの、味や香りにもそのセンスが反映されていますから」

 

へえええ〜〜〜〜っ!!!

 

さして疑問に思っていなかった、ジャケ買いの成功率がなぜ高いのか、それを言語化してもらった気分でした。

 

 

レコードにしろワインにしろ、ジャケ/エチケット買いの成功率をあげるには、いきなり、ではむずかしい。

というのも、自分の中の判断基準を設けるために、多少の経験が必要なんですね。

蓄積されたものがあって初めて、同じベクトルにあるものは、瞬時に判断がくだせるようになる。

 

 

今年に入り、“おかたし”邁進中。

些細なことでも、と1日1個は不要なものを処分、から、ある程度まとめて捨てられるようになり、同時に、“あっ、これもう要らない”というセンサーが働き、目につくようになりました。

経験値を上げることは速度も精度も上がっていくんだな、ということを、今、実感しています。