書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

紙よさらば。舵取りをしないと船は沈むだけ

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1980年代後半から90年代にかけて、

東京・新宿は小滝橋通りのレコード店を回りながら(もっともレコード自体は渋谷や下北沢、吉祥寺で買うことが多かったのですが)、

よく買ったのが、イギリス発音楽情報紙『NME』。

www.nme.com(ちなみに“NME”は“New Musical Express”の頭文字をとったものです)

 

もちろん現地調達もしていました。

ほとんどは処分したけれど、大事にとっている号もあります。

ただねぇ、ここ何年、いや10年以上か、はウェブで充分なのも事実。

 

この『NME』、私が買い始めた頃は表紙だけがカラーで中面はモノクロ(あれっ? 表紙も、だったかなぁ。。。)。

その後1990年代終わり頃だったか、(おそらく)DTPの普及によりオールカラーになり、タブロイド版から雑誌スタイルになったのもこの頃だったか。

その後、2000年代に入って、ライバル紙『Melody Maker』を吸収合併。

2015年には有料の雑誌からフリーペーパーに

(タウンガイドの『Time Out』も同じ頃だったような記憶)。

 

しかし、当然ながらウェブの一般化には勝てず、

ついに2018年3月9日(金)の発行をもって、66年続いた紙媒体を廃刊。

今後の情報発信はウェブメディア中心に、ようやく、というべきか、本格的に舵を切ったわけです。

www.bbc.com

  

まあ、これも時代の流れ。

でももしかしたら一周して数年後に紙が逆に新鮮で、週刊とはいかないまでも何らかの紙媒体を発行する可能性もあるわけで。

 

 

ロンドンは、WiFi環境はいいんだけれど、地下鉄に乗っていたりすると遮断されやすく、それもあってか、

また有料紙媒体はがんがん休刊しているものの、フリーペーパーの類はカラフル。

地下鉄やバスで読んでいる人が多いのはそれも理由のひとつではないか、と。

 

ざっと思いつくだけで駅に設置してあるものは、『Metro』(これは朝刊的な役割)、『London Evening Standard』(これは夕刊的な役割)、『City A.M.』(経済紙。早起きするか、電車で放置されているものをピックアップ)といった新聞に加え、

『London Evening Standard』の雑誌版(これは週刊)や、たま〜に『City A.M.』の雑誌版、ショップやアートギャラリーなどには『Time Out』や『NME』のラックがある、といった具合。

 

しかもフリーペーパーと侮ることなかれ、そのほとんどが敏腕アートディレクターを据え、ライター陣も豪華で、

タダでいいのかしら?といった充実ぶり。

 

このあたりのカラクリのひとつに広告があって、

たとえば『Time Out』は表紙はでん!とタイアップ(広告)だったりするわけです。

でも、いわゆる有料広告ではないから、いかにも広告広告したものではなく、

ちゃんとアートディレクターが手がけ、『Time Out』のカラーを出しながら、といった具合。

 

どの道、フリーペーパーは広告収入で成立しているわけだから、

この判断はかえってすがすがしい。

ただ、『NME』の紙媒体廃刊により、『Time Out』もいよいよじゃないか、って思っています。

 

 

日本のタウンガイドって、20年前と比較しても作りがあんまり変わらない印象のものが多い。

そのくせ、売上げが落ちていると言う。

これって読者の嗜好なのか、制作側がしがみついているのか、

後者が大きいんだろうなぁ。

誰も責任を取りたくないから、時代はこんなに動いているのに、抜本的な変革はしたくない、っていうね。

 

あと、雑誌のウェブ版が、単に紙の記事を転載ってどーなのよ。。。

(紙とウェブだと同じテーマでも見せ方が変わる、のになぁ)

内部の軋轢etcは容易に想像できるけれど、このままだと船は沈んじゃうよ〜。