書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

立場が真逆になって初めて見えること

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私のやっている仕事のなかで一番長いのが編集(制作指揮、映画でいうと監督)。

裏方の総本山ともいえる仕事で、企画を立てあれやこれやお願いするという流れ。

そこには取材も含まれ、当然、取材する立場となります。

 

仕事を長くやっていいると、また、イギリスの食研究というとがったことを看板に掲げていると、

取材を受ける立場に回ることもあります。

現在発売されている、40代~50代の女性向けの月刊ファッション誌
éclat(エクラ)」2017年7月号(集英社)の
“47都道府県 地元の「銘菓」教えます!”もそうでした。

こちらでコンシェルジュという立場でご協力しました。

 

この手のもの、自分が制作する立場なのでよおおおくわかるのですが、

時間も手間もかかります。
ざっと流れはこんな感じ。

・企画決定
  ↓
・協力者探し+打診
  ↓
・協力者に取材(アンケートであることが多い。内容はいくつもの項目があります)
  ↓
・取材結果をとりまとめ
  ↓
・具体的な誌面構成(足りないものは協力者に追加取材)

  ↓
・掲載アイテム/店舗などの取材&撮影

  ↓
・校正(協力者+掲載先への確認含む)

 

 

今回もこんな流れで、

回答した中からピックアップされ掲載さたのはひとつですが、表に出ないだけでいくつもの項目に対してお答えしています(この手の企画はたいがいそうです)。

この取捨選択がむずかしい、ってのが通常の制作サイドの気持ちですが、

今回は協力した側なので、へ〜、これが選ばれたんだ!というおもしろさ。

 

こういうの、頭ではわかっていても体験すると、改めて取材を受ける側の気持ちがよくわかるな〜。

 

 

今回、私が回答したのは、現在私が暮らしている“福岡の銘菓”だったわけで、

この地に暮らして5年以上、取材はもちろん下見や自分の興味で、ある程度知っているつもりだったけれど、

自分のなかで整理されていないし、むしろ知らないことが多いことに気づきます。

そして、回答するとはいえ、

自分の記憶だけを頼りにうっかりしたことは言えないわけで、

ざっと下調べをして答えるとなると、

あ〜、そうだった! えっ、こうだったの?みたいな発見も出てきたり。

 

 

質問に答えるというのは、

考えていることを言語化するという作業です。

これってむずかしい。

メディアに出ている方が流暢に自らの思いや考えを発することができるのは慣れもあるけれど、

取材を通じて、常に考える、ということを迫られているんだなぁ、と感じるわけです。

その積み重ねは、熟考することにもつながる。

 

 

取材される立場に回ると、意識がまったく変わり、テーマについて客観的かつ相対的に眺めることをすることになり、思考のヒダが広がる気がします。

今回は、私にとって今までにあまりないテーマだったので余計に、貴重な機会をいただきました。