書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

「いただく」と「頂く」と「戴く」と

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以前、こちらの記事(↓)を書いたら、反響が大きく、ひらかなや漢字の使い分けって迷いつつ、もしくは知らずに使っている人が多いんだなぁ、と認識。

ricorice.hatenablog.com

この「ください」「下さい」に通じる部分も大きいのが、今回取り上げる

「いただく」と「頂く」と「戴く」。

 

 

まずはひらがなと漢字の使い分けをみるとしましょう。

このルールは、「ください」「下さい」と同じ。

(初見&忘れた!って方はチェックしてみてね!)

 

ひらがなを使うのは、ほかの動詞にくっつけて尊敬・丁寧表現する言葉(補助動詞と呼びます)の場合。

 

・ケーキをとっていただいた

 

たとえば、ブッフェなどで手が塞がって、一緒にいた人が手伝ってくれたときなどに使いますね。

 

このルール、“補助動詞はひらがなを使う”は「いただく」も「ください」も一緒です。そしてほかの言葉の場合も、これは適応されます。

 

 

では、「頂く」と「戴く」では?

 

  1. ケーキを頂く
  2. ケーキを戴く

 

この2つ、漢字によって意味が変わります。

おわかりでしょうか。

 

別の言葉で言い換えましょう。

 

  1. ケーキを頂く → ケーキを食べる
  2. ケーキを戴く → ケーキを(ありがたく)受け取る

 

1の“頂く”は“食べる” “飲む” “摂る”の謙譲語です。

もうひと言付け加えると、“食べる” “飲む” “摂る”という動作に重きがおかれています。

 

では、2の“戴く”。

こちらは、物品や品物に関わる場合に使用されます。

わかりやすいところでいうと“いただき物”は“戴き物”となるのです。

 

 

ちなみに、「頂く」は常用漢字なので、漢字で使ってよし、とされる言葉です。

「戴く」は常用漢字外。ひらがなの方がふさわしいかな、といった言葉です。

 

ただし、私自身は、「いただく」と「頂く」と「戴く」はいずれも場合も、今はすべてひらがながいいのでは、と感じています。

お礼状などであれば「頂く」という漢字でいいのですが(あらたまった、かしこまったぐらいでちょうどいいので)、これが雑誌やウェブで一般化した言葉として登場すると一気にかた〜い文面になっちゃうんですよね。

(ただ、“食べる” “飲む” “摂る”を(そこまで恭しくする必要のないものにまで)“いただく”とする現象には、私自身は違和感があります。いちいち「させていただく」(↓)と言うのに通じるものを感じます)

ricorice.hatenablog.com

なので、一応のルールをふまえつつ、その場にふさわしい言葉の使い方をすればいいのではないでしょうか。