「こだわり」という言葉を私が軽々しく使わない理由
私は、情報発信サポートにしろ、食の編集・ライティングにしろ、イギリスの食研究にしろ、いずれにしろ食関連の仕事がメインです。
ここのところ本当に多用されるようになったなぁ、と思うのが、
“こだわり”
という言葉。
“こだわりの食材”
“こだわりのメニュー”
などなど。
食べることだけじゃないですね、あらゆるところでこの“こだわり”という言葉、使われています。
“こだわりの宿”
“こだわりのアイテム”
なんて具合にね。
この“こだわり”という言葉、私自身は基本使わないようにしています。扱いを慎重にしていると言ったほうがいいかもしれません。
“こだわり”を動詞の“こだわる”にしてみるとどうでしょう。
こだわる”を使った
“些細なことにこだわる”
という言い回しを、ぱっと思い浮かべるのではないでしょうか。
どんな印象をもちますか?
そう、この“些細なことにこだわる”にみられるように、本来、
“こだわる”“こだわり”
はネガティブな意味をもつのです。
・必要以上に気にする
・ひっかかったりつかえたりする
・けちをつける
といった風に。
現在、多くみられる
・物事に強く執着する
を表す
“こだわる”“こだわり”
は、先のネガティブな意味合いがプラスに転じたものです。
言葉は時代とともに変わるので、このこと自体にどうこう言うつもりはありません。
しかし、言葉を届ける対象によっては
“こだわる”“こだわり”
という言葉は避けた方がいいと私は考えます。
“こだわる”“こだわり”のポジティブな意味合いは新しいものなので、若者向けであればいいのでしょうが、その言葉を届ける対象が年配の方だと、違和感を抱かれるかもなぁ、と感じるのです。
一般的な内容の場合、一応の対象年齢はあるものの、実のところ年齢に関わらず、になるので、
“こだわる”“こだわり”
を私が使わないようにしているのは、こういう理由からです。
“こだわる”“こだわり”を使わないでどうするか、って?
“厳選する”
“吟味する”
“丹精込める”
“心血を注ぐ”
“思いを込める”
などと言い方を変えます。
それともうひとつ、私が
“こだわる”“こだわり”
を使わないようにしている理由は、あまりにこの言葉が蔓延してしまって、手垢がついてしまった感が否めないからです。
すっかり常套句になってしまって、本来伝えたいポジティブな
“こだわる”“こだわり”
がぼんやりとしか感じられない。
さて、どう感じますか?