書くこと、編むこと、伝えること

食のダイレクター、編集者、ライター、イギリスの食研究家“羽根則子”がお届けする仕事や日常のあれこれ

実力は貨車にのってやってくる

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今から30年ほど前、私は高校生で、自由な(というか野放しというか)学校でのびのびとした学校生活を送っていました。

先生もいろんなタイプの人がいて、高校3年生のときの現国の先生が、授業を、教科書に沿ったことをあんまりしないで、漫談ばかりする初老の先生がいました。

(今はそんなことダメなんだろうなぁ。のどかな時代でした)

当時は与太話として聞いていたのですが、そうじゃなかったかもなぁ、社会に出るに当たっての橋渡しのような話をしてくれていたのかもなぁ、って気づいたのは随分後。

 

実力は貨車にのってやってくる

 

当時、その先生が受験生のクラスでよく発した言葉。

コツコツやっていると、ある日突然実力が開花する、徐々にではなく、ある日突然次のステージに上がる。

それが数字としても、本人の感触としても分かるってことだったのですすが、受験にまったく本気になれなかった私は、これを体験できずじまい。

仕事でも、貨車のようにどんと!というのは今の今まで体験していないなぁ。

 

 

でも、これを実感したのは、英語。

イギリスで数カ月、ケンブリッジ英語検定のためのコースを受講していたときがありました(これに合格しているかどうかが、英語が母国語でない外国人にとって大学など高等教育を受ける際の英語の力を証明する指針となる)。

軸となったのは文法で、授業でもきちんと論理的な説明を受け、これ、言語学の域。

宿題もどっちゃり出て、とにかく勉強漬けだったんですよ。

なので、このコースのあと、大学の経済の短期クラスに進むにあたり、面接があったときのこと。

この面接がケンブリッジ英語検定とかぶっていて、「クラスの最後に、認定試験があるので受けるといい」と言われたときに「いやいや、試験はたくさんです。今で精一杯ですから」と応えて、試験官を呆れさせたという。。。

 

で、ケンブリッジ英語検定試験は合格したものの、英語の実力がついたのかどうか、実感としてはよくわからず、そんな状態のまま帰国。

日本に戻ったら戻ったで、しばらくは四字熟語が出てこない、長い言い回しをうまく話せない、といった日本語もあやふやな宙ぶらりんな状態で、せっかくあれだけ勉強漬けだったから忘れないように、と毎日少しずつ復習(文法のテキストをやり直す)することに。

 

そうして、帰国して2年後、イギリスへ。

このとき、世界がぱーっと開けたように、言っていることのわかること! 目に飛び込む言葉のわかること!

ずっといるときには上達していることに気づかなくって、間があいたからこそ認識できたのかもしれないし、帰国してからのコツコツも有効だったのかもしれないし。

実力は貨車にのってやってくる、を後にも先にも初めて体験したのです。

 

蓄積は裏切らない。

これ、ほんとよ。